恋、物語り



「アヤちゃんだっけ?よろしくね」
串に刺さった鶏肉を私に差し出して、ナツキの彼氏の友達が言う。

「あ、ありがとうございます」
笑顔で答えるつもりだったのに、上手く笑顔が作れなくて、本当に自分はこういうのに慣れていない。


彼の名は、慎一と言うらしい。
「シンで良いよ」そう言うと私の隣に座った。


「アヤちゃん、その水着可愛いね。
クタってないし、新品?」

シンさんは軽くそう言った。
私は持ってきていたパーカーを羽織りながら「あはは、そうです。」と体を隠す。

水着…ビキニってやつは隠す範囲が狭すぎる。
そんなことを思ったが、買ったのは自分だ。
大人ぶってビキニを買ったことを少し後悔した。


ナツキはもはや彼氏といい雰囲気で、バーベキューをしながらワイワイと2人の世界に入っている。


あまりの居心地の悪さに帰りたくなったが、ナツキの顔に泥を塗るわけにはいかず、そのままシンさんと話しを続けた。



「アヤちゃん、可愛いのに彼氏いないとか意外だね」
私のどこを見て可愛いと言うのか。
どう見ても中の下。…いや、中の中くらいにしておきたい。

以前、似顔絵師さんに「特徴のない人は書きにくいなぁ」と言われたのをふと思い出した。


「あは、は。
可愛くないですって。
それに…か、彼氏いますから」

かぁ。と顔が熱くなる。
彼氏と口にしてのは初めてだったから。


「あれー?彼氏いるの?
ナツキちゃんからいないって聞いてたからさ」

「はい。あの…最近出来たんです」


シンさんは「あぁ、そうなんだ」そう言って、
「でも、今日くらい楽しもうよ」と続けた。


「…はい」と消えるような声で応えることしか出来なかった。





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