恋、物語り
授業は上の空だった。
窓から見える青々とした空、ゆらゆらと揺れる雲をずっと見つめていた。
時折教師が私を見て何かを言いたげに見えたけれど、見に入らない。
ーー…彼は私のどこを好きになったのだろう。
そんなことばかり考えていたら授業の終わりを告げるチャイムが教室中に鳴り響いた。
ザワザワと教室が動き始める。
椅子を引いて立ち上がる者。
教科書を仕舞う者。
「んー」と声を出して体を伸ばす者。
それを見てようやく「はぁ」と息を吐いた。
長い間、息をしていなかった気さえする。
「アヤ?」と名を呼ばれ、見上げるとお弁当を持って私の目の前に友人のナツキが立っていた。