恋、物語り
「……もん…」
「え?」
小さく呟いた言葉は彼の耳には届かなかった。
聞き返されることはとても恥ずかしかった。
意を決して発した言葉をもう一度言わなくてはならない。
「嫌なんだもん…。この写真…。
もう別れてるってわかってるけど…
けど、一度は好きになった人でしょう?
…そんな小林くん、知りたくなかった…」
「えっ?」と驚いた表情をして、彼は私の目の前に座り直した。
手を握られる。ドキっと鼓動が高鳴った。
下を向いて口を尖らせる私の顔を、彼は覗き込んで「アヤ」と、私の名を呼ぶ。
「アヤ?…え?……嫉妬してくれてるの?」
かぁ。と顔が赤くなる。
次の言葉が見つからない。
どこ言葉を並べていいのか分からない。
何かを言いたげな口を閉じることなく、静かに頷いた。
ギュっと握られた手の力が強くなった。
そして彼は顔を赤くして、とびきりの笑顔を向けて「嬉しい」と言った。