煩いHoney
「だからもう二度とわたしに頼みごとはしないで。ううん…頼まれたってあんたになんかなにも貸さないし、なにをあげたりもしないからっ」
吐き捨てると同時に、日誌をやつのユニフォーム目がけて投げつけた。
「痛ッ! おっ、おい、滝井!」
あいつがうろたえている間に、わたしは教室を飛び出した。そのまま全速力で廊下を走る。
競ったらまず勝ち目はないのに、あいつは追いかけてこなかった。
…その意味をあらためて痛感し、走ったせいでそもそも苦しいのが余計に意識させられれば、うそみたいに体が重く感じられた。
けれど、ここで気をゆるめればすぐにも涙がこぼれてきそうで、どうにか踏ん張ったまま、わたしは気の遠くなるような思いで家まで帰った。