煩いHoney

ユニフォーム姿のまま、汗まみれなのもかまわず教室へと入ってくる。

なにやら切羽詰った様子で顔も強張り、一寸の迷いもなくわたしの席へとやってくれば、根が単純なわたしはその強い眼差しにおもわず胸が高鳴った。


そして、あいつはわたしのすぐ目の前で立ち止まると、


「滝井、ティッシュ貸して!」


…え?

なんて。


「滝井、ティッシュだ、ティッシュだって!」


鼻を押さえ、鬼気迫る様子で急かされて、わたしは慌てて半ば機械的にポケットティッシュから何枚か取って渡した。

それを奪うようにして豪快に鼻をかむと、やつは――よっぽど急を要していたのは言うまでもないが、それこそぎりぎりでトイレに間に合ったみたいに潤んだ眸で目尻をほころばせ、盛大に息をついた。


「ああよかった、セーフ。危なかったぁ」

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