手が届く場所
だけど我が弟は悪びれた様子もなく、
手を振って俺の部屋から退出した。
え、あれ、俺無視されたの?
一人でボケッと扉を見つめていれば、
「早くしなさい!」っていう母上からの叱責を受けて、
慌てて着替えた。
そういえば、俺ちょっと寝すぎたんだ。
バタバタと騒がしい朝というのは、
我が家では、珍しい。
だから今日もいつも通り、
のんびりとした朝を迎える。
「おはよう、お母さん」
「ほら、ご飯出来てるよ?」
ダイニングキッチンでお母さんと顔を付き合わせて、
おはようを伝えるのは毎日の日課。
というか、我が家ではこれが当たり前なのだ。
お父さんはいつも仕事が早いから居ないけれど、
皆で顔を合わせて朝ごはんを食べる。
この日常が、俺にとっては
何よりも大切なものだ。