【超短編 09】昭和ノスタルジア
いつしか景色は私の知らないところへと移動していた。子供時代は密林に思えたほどの雑木林が今は小さなスーパーマーケットになっていた。小学生の頃、土曜日に大好きなバラエティー番組を見たあと、近所に住む男の子たちに混じってその日テレビに出ていたアイドルの真似をしたり、その頃流行ったギャグで笑いあったり、虫取り網でチャンバラをしたりしながらクワガタやカブトムシを取りに出掛けた場所だった。
そして今の私の目的地でもあった。
しわの数がめっぽう増えた母に頼まれ、夕食の材料を買うために私は乗り始めた記憶のない自転車にまたがり、少しの寄り道を経てここへ辿りついたのだ。私はアスファルトになったスーパーの駐車場を夜に舞う虫たちのようにグルグルと回り始めた。
自転車に乗れるということは、過去に私が自転車に乗れたということだ。
それは忘れていてしまったとしても、絶対に変えることの出来ない私の大切な思い出なのだ。
だけど、世の中には思い出さないと出来ないことがあることも私は知っている。
例えば自転車の降り方とか、だ。
そして今の私の目的地でもあった。
しわの数がめっぽう増えた母に頼まれ、夕食の材料を買うために私は乗り始めた記憶のない自転車にまたがり、少しの寄り道を経てここへ辿りついたのだ。私はアスファルトになったスーパーの駐車場を夜に舞う虫たちのようにグルグルと回り始めた。
自転車に乗れるということは、過去に私が自転車に乗れたということだ。
それは忘れていてしまったとしても、絶対に変えることの出来ない私の大切な思い出なのだ。
だけど、世の中には思い出さないと出来ないことがあることも私は知っている。
例えば自転車の降り方とか、だ。