誰よりも大切なひとだから。
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……昔。
ちょっと、気になってた人がいた。
長野くんの一番の親友なんだけど。
背が高くて、無愛想なくせに、ぶっきらぼうな優しさがあって。
修学旅行のメインイベントに近い、女子どうしの恋バナの時間に
『ちょっと、気になるひとがいる』
と、つぶやくと、根掘り葉掘り質問されて。
気になるひとの名前が知られると。
その女子たちは、ニコニコ顔で、その気になるひとの侮辱や馬鹿にする言葉や、彼の良からぬ噂を次々と口にした。
私がはらわた煮えくりかえしながら黙って聞いていると、そのひとを気になっている私のことまで、平然と侮辱してきた。
完全に堪忍袋の緒が切れた私は、ムードを壊さないように、ニッコリ笑って言い放った。
『ご忠告どうもありがとう』
その目が笑ってないことを暗闇でお互いの顔が見えなかったせいか、他のひとたちは気づいていないみたいだ。
彼女たちは笑いながら別の話題へと移っていく。
その話を上の空で聞きながら、私は固く誓った。
"無闇に好きなひとのことは言わない"と。