誰よりも大切なひとだから。


*.**.**.*


東先生と長野くんと私というコンビで朝のおしゃべりをするのが日課になってきている今日この頃。


「あれ?今日早いやん。お前」


教室に入ってきた人物に、目を丸くした先生。


いつもチャイムぎりぎりにやってくる松本さんだ。


セーラー服に、スカートの下はジャージ。


ケバい化粧に、派手なネイル。


正直、ダサいよ?と言いたくなるのを何とか口止めする。


そんなこと言ったら、身の破滅。
うん。


「今日は、早めの電車乗れてん♪」


ニコッと真っ赤な唇で微笑む。


決して悪い子じゃないとは知ってるが、どうも苦手だ。


松本さんは自分の席に座ると、化粧直しを始めた。


すでに豊かなまつ毛に、マスカラを重ねている。


ケバさをバージョンアップさせる気か。


ま、彼女のことはほっといて、私は長野くんと先生のほうを向いた。


「そういやさ、竹田って久保田と付き合ってんのか?」


東先生が聞いてくる。


こんな恋愛話が大好きなのだ、先生は。


どうだったかなぁと記憶を振り返る。


確かに竹田くん、修学旅行のとき、久保田さんと友達以上の関係っぽかったような……。


「竹田くんって、藤宮さんと付き合ってるんじゃないん??」


長野くんがポツリと1言。


うーん。そういえば、藤宮さんと最近休み時間のたびに、喋ってる。


あれ?でも……。


「竹田くん。最近ずっと、大橋さんと一緒に帰ってる……」


うん。帰ってる。
めっちゃ、楽しそうに話しながら。


三人で沈黙……。


竹田くんが、女たらしという噂は前々から聞いてたけど。


まさか、彼女候補がクラスから三人も出るとはね。


< 116 / 156 >

この作品をシェア

pagetop