誰よりも大切なひとだから。



私のつれない返事に口を尖らせて、話の矛先は長野くんに向いた。


「長野こそ、彼女作れや」


「いや、無理です」


その返事の早いこと早いこと。


ガーンとショック受けてるのは、私だけ?


告白前からあっさり玉砕してる気がするのは私だけ!?


「そもそも相手いませんし」


と、長野くんは苦笑する。


「えー!絶対長野くんのこと好きな人おるって!」


突然話題に入ってきた松本さんの言葉にピクッと反応する。


……まさか、バレてませんよね?


「だって、長野くん。男女問わず、無条件に優しいやん!!」


力説する松本さん。


そうだよね?松本さんもそう思う??


無条件の優しさ。
私が彼を好きになった理由のひとつ。


「さては、松本。お前は長野のこと……」


意味深に微笑んだ東先生に、カラカラと笑って応える松本さん。


「そんなんちゃうよ!あたし、彼氏いてるもん!!」


「あやしい……」


「あやしくない!あたし、彼氏と付き合ってもう5年やで!!」


東先生と松本さんのやり取りに、苦笑いみたいな困った笑いをしている長野くんを盗み見ながら、私も笑った。


……けど、ちゃんと笑えていたかは、甚だ疑わしい。


"彼女作れや"のあとの返事の速さが喉元につっかえていた。



< 118 / 156 >

この作品をシェア

pagetop