誰よりも大切なひとだから。



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目を見張った。


洗濯機を回そうと、ベランダに出てきた朝のことである。


2階のベランダから見える地面が白かった。


地面だけじゃない。


家の前の駐車場に止められた車も。


保育園のグラウンドも。


近所の幼馴染みの家の屋根も。


「……雪だ」


陰鬱な色の空からやってくるとは思えないほど、白い雪が途切れることなく降っている。


この街では珍しい光景に私は寒さを忘れて、見入った。


「見てみ!雪積もってるよ」


まだ眠気まなこの弟に呼びかけると、目を輝かせて、外へ出てきた。


「うわー!」


積もった雪を見たことがなかった弟は可愛らしい歓声を上げた。


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