誰よりも大切なひとだから。
*.**.**.*
珍しく雪が降れば、慣れていない私たちは当然、パニックになる。
スカートは危険と判断して、私服姿で学校に向かう。
道も所々凍っていて危ないから、私は自転車を残念し、バスで行くことになった。
……が。
バスが来ない。
いや、現実には来ている。
見えている。
バスの姿が見えている。
しかし、たなびく乗用車の数は半端ではなく、渋滞に引っかかったバスはノロノロとしか動かない。
隣で雪と戯れている保育園児のほうが速い。
バスの姿が見えてから、5分。
さっきからバスと私の距離は縮まっていない。
「急がないと……」
間に合わない。
長野くんが来る前に。
いや、クラスメイトの誰も来る前に。
教室につかないと、彼の机にお菓子を入れられない。
クラスメイトのいる前でそんなことをしては、長野くんが好きだとばれてしまう。
だから誰よりも早く学校に行かないといけない。