誰よりも大切なひとだから。



*.**.**.*


珍しく雪が降れば、慣れていない私たちは当然、パニックになる。


スカートは危険と判断して、私服姿で学校に向かう。


道も所々凍っていて危ないから、私は自転車を残念し、バスで行くことになった。


……が。


バスが来ない。


いや、現実には来ている。


見えている。
バスの姿が見えている。


しかし、たなびく乗用車の数は半端ではなく、渋滞に引っかかったバスはノロノロとしか動かない。


隣で雪と戯れている保育園児のほうが速い。


バスの姿が見えてから、5分。


さっきからバスと私の距離は縮まっていない。


「急がないと……」


間に合わない。


長野くんが来る前に。
いや、クラスメイトの誰も来る前に。


教室につかないと、彼の机にお菓子を入れられない。


クラスメイトのいる前でそんなことをしては、長野くんが好きだとばれてしまう。


だから誰よりも早く学校に行かないといけない。



< 129 / 156 >

この作品をシェア

pagetop