誰よりも大切なひとだから。



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温かい電車から、駅のホームに下りると、寒さが身にしみて、思わず縮こまった。


「……寒いよ」


友達の中原(なかはら)ともみこと、ともみんが呟く。


ともみんは寒がりなのだ。


「確かに寒い」


12月。この真冬の中、ジーパンにくるぶし丈の靴下、スニーカーという服装は間違いだったと後悔する。


足首に風が通って、結構寒い。


「というか、この駅で合ってるんだよね?」


寒さに震えながら私にしがみつくともみんに訊くと、ともみんが前方を指さしながら、言った。


「合ってると思う。ほら、おんなじクラスの子いるじゃん」


「あ、ほんまや。あれって、長野(ながの)くん?」


「そうやと思う」


ともみんの言葉に、私は少しだけ口の端を上げた。


長野くんが来てるなら、ちょっとラッキー。


長野くんは、4月におんなじクラスになって以降、ちょっと気になっている子だったから。


凛としていた横顔。
真っ直ぐな瞳。


私の胸キュンとなるポイントを見事に押さえている子。


他の女子たちは、あんまり長野くんには興味ないみたいだったけど。
(長野くん、ごめん!!)


私はいつも密かに観察してる。


ただ、あまり話したことはないんだけどね。



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