誰よりも大切なひとだから。
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信号が青に変わった。
ともすれば寒さで痛む手のひらで、ハンドルを握りしめる。
変速機は1番重いものにしているから、進み出しはかなり重いけれど、勢い良く漕ぎ出せば、自転車はスイスイ進んでいく。
小学校高学年から乗り続ける自転車だから、変速機を軽いのにしていると、何もしなくても、勝手にギアチェンジして、重くなる。
それが鬱陶しくて、この頃はずっと、1番重いギアで乗っているのだ。
「さむっ……」
前方からの風に、つぶやきだけでなく、涙までこぼれた。