誰よりも大切なひとだから。



「先生は?」


クラスメイトの一人が呟く。


最寄り駅から家までは先生が案内してくれることになっていた。


その先生がいない。


「携帯に電話しようか?」


「あ、じゃあ、私するよ」


私は鞄からスマホを取り出し、東先生に電話を掛ける。


修学旅行のときに、何かあったらここに掛けろとクラス全員が登録させられたのだ。


たまに、先生が暇なとき、私のスマホに電話が掛かってくる。


確か、先生の方も、私の番号を知っていたはずだ。


プルルル……プルルル


2、3回のコールで先生が出た。


『おう!近藤(こんどう)か!全員揃ったか?』


「集まりました!全員」


『おっしゃ!今駅の外おるから、改札の所行くわ。そこで待っといて』


「はーい」


プープーという電子音。


「先生、もうすぐ来るって。あ、来た!」


階段の方から、手を上げてやってきたのは、いつも学校で見慣れた東先生だ。


学校でもだいぶラフだが、日曜日の今日はいつも以上にラフな服装だ。


< 4 / 156 >

この作品をシェア

pagetop