誰よりも大切なひとだから。
「先生は?」
クラスメイトの一人が呟く。
最寄り駅から家までは先生が案内してくれることになっていた。
その先生がいない。
「携帯に電話しようか?」
「あ、じゃあ、私するよ」
私は鞄からスマホを取り出し、東先生に電話を掛ける。
修学旅行のときに、何かあったらここに掛けろとクラス全員が登録させられたのだ。
たまに、先生が暇なとき、私のスマホに電話が掛かってくる。
確か、先生の方も、私の番号を知っていたはずだ。
プルルル……プルルル
2、3回のコールで先生が出た。
『おう!近藤(こんどう)か!全員揃ったか?』
「集まりました!全員」
『おっしゃ!今駅の外おるから、改札の所行くわ。そこで待っといて』
「はーい」
プープーという電子音。
「先生、もうすぐ来るって。あ、来た!」
階段の方から、手を上げてやってきたのは、いつも学校で見慣れた東先生だ。
学校でもだいぶラフだが、日曜日の今日はいつも以上にラフな服装だ。