誰よりも大切なひとだから。
学校は家から自転車で10分あまり。
対した距離じゃないから、あっという間に着いてしまう。
校門をくぐり抜け、2年の駐輪場に自転車を止めて、校舎に入った。
講義が行われる教室の扉を開けると、もう数人が来ていた。
一年の頃から仲の良い男子と、あとは……一度も喋ったことがない理系男子。
そこに、長野くんの姿はない。
残念な気持ちで俯く私に、仲の良い男子、門田(かどた)が手招きした。
「近藤、俺がわからんときのために、隣座っといて」
門田とは仲が良い、というより、1年の頃から勉強を教えてきた相手だ。
真面目で、何事にも努力を惜しまない性格。
直接、先生に質問しに行くこともあるが、忙しい先生方より私のほうが捕まえやすいらしく、いつも質問される。
わりと、飲み込みが早いから、教えるのも楽なんだけど。