誰よりも大切なひとだから。



細い路地だが周囲に立つ家はかなり大きい。


「ここや」


バイクを停めた東先生が顎で示した家もなかなか大きい。


昭和の頃に建てられたらしいその家は、確かにそれなりの風情があっていい。


「里ちゃん!生徒ら来たで」


「はーい!」


里ちゃんとは東先生の奥さんの名前である。


「うわー!里ちゃんって美人!!」


家から出てきて先生の隣に立った里ちゃんを見て、生徒たち全員が声を上げる。


東先生が学校でも、今日の里ちゃんはな……とか里ちゃんめっちゃかわいいねんとか、目をハートにしている理由がわかる。


年相応の美しさを持つのだが、ニコッと笑うその顔には少女のようなあどけなさがあった。


「みんな、いらっしゃい。さ、中入って」


初対面の里ちゃんに手土産を渡して、私たちは東先生の家にお邪魔した。



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