誰よりも大切なひとだから。



しばらく、優希から返事がこなかった。


何と返せばいいのか、悩んでいるのだろうか?


〈いいんだよ。私は今のままでも。今の生活も結構気に入ってるし〉


畳み掛けるように、そう書いたのに。


〈彩さんは何が怖いの?〉


しばらくして、返ってきた返事に、私は唇を噛み締めた。


何が怖いの?
さっきの自問を聞かれていたみたいで、少し驚いた。


わかんない……


その事実だけを打ち込んでいたのに、送信を押したときには、少し文字が増えていた。


〈わかんない。だけど、たぶん、今の毎日が崩れるのが怖いんだと思う〉


自分で無意識なうちに打ってしまった言葉を、じっくりと視線で追う。


"毎日が変わるのが怖い"


なんか、読んでみて、違和感はなかった。


感情と言葉の差が生み出す歯がゆさもなかった。


そうだったんだ、自分は。
変化が怖い。


もし告白して、長野くんと付き合えたなら、きっと、大きな変化だろう。


今まで恋人なんて一人もいなかった私だったから。


それにフラレて、やっと築けそうな友情関係が壊れてしまうのも怖い。


告白して、その変化に耐えられなくて。
そして、自分の行動に後悔するのが怖い。



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