誰よりも大切なひとだから。



*.**.**.*


新学期が始まった。
高校2年の三学期だ。


高校の進路指導の先生いわく"受験生のゼロ学期"と言われる大切な時期に入ってしまったのだ。


およそ、1年後にはセンター試験が待っている。


恋に気づいたからと言って、のんびりしていられる訳じゃない。


昨年と同様、朝一番に登校して、寒い教室で、英語の参考書を開ける。


自習ノートも開け、シャープペンシルを持ちながら、だけど、顔だけは微笑みを抑えられない。


誰もいなくてよかった。


2週間ぶりに長野くんに会えるのが嬉しくて、ニヤついている顔なんて、死んでも誰にも見せられない。


私はプライドが高いのだ。


< 64 / 156 >

この作品をシェア

pagetop