誰よりも大切なひとだから。


もうどうでもいいや。


半端ヤケになって、後ろの席の親友、ともみんと何やかんや喋っていると、席替えのあみだくじが回ってきた。


「彩ちゃん。ここにする?」


「どこでもいいよ。適当に書いといて」


「じゃあ、彩ちゃんの分も書いとくね」


ともみんがペンケースからシャーペンを取りだして名前を書いてくれた。


上に『近藤彩芽』
そのすぐ下に『中原ともみ』


これで今回の席も、私の後ろにともみんがくる。


「彩ちゃん。また寝てたらノート見せてね」


「たまには自分で板書しなさいよ。毎時間寝てるじゃない」


「失礼な。体育はちゃんと起きてるじゃない」


「はいはい」


何気ない素振りを心掛けて、ちらりと長野くんを見た。


彼にはまだ、あみだくじが回ってきていないらしく、懸命に数学の参考書を読んでいる。


ともみんが後ろなのはまぁいい。
休み時間のたびに、ノートを貸すくらいだ、困ったことは。


……問題は、長野くんがどこにくるか、なんだよなー。


ちらりとあみだくじを見たところ、私の名前の上は名前が書かれていたから、私の前の席は、長野くんのはずがない。


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