誰よりも大切なひとだから。



庭に大きなテーブルが置いている。


その周りには、ガスコンロと調理器具と幾つかの椅子。


「適当に座ってくれ」


椅子に座ると、丸テーブルの右半分を女子が、左半分を男子が占領した。


わたしの左に女子ふたり。
そのさらに隣に、長野くんが座った。


「ちょっと待っててな。料理出すわ」


「え、東先生が作ったん!?」


「そうや。料理は趣味やから」


へぇ。東先生が大の釣り好きだと知っていたが、まさか料理好きだとは思わなかった。


「先生の料理楽しみー♪」


しばらくすると、東先生が皿を抱えて、部屋から出てきた。


テーブルに並べられるその料理は、どれも本格的過ぎて、うなる。


サーモンとローストビーフ。
サラダに手作りドレッシング。
オリーブが乗ったピザ。
ペペロンチーノにトマトパスタ。


インスタントの料理しか食べたことがない私は思わず、息を呑んだ。


続いて、先生は飲み物を出してくれる。


グレープソーダに麦茶にコーラ。


「これは、俺と里ちゃんのぶん」


更にテーブルには、ノンアルコールビールに、普通のビールに、琥珀のウイスキー。


忘れていたが、先生は酒好きだ。
修学旅行でも口が寂しいと、夕食でノンアルコールビールを飲んでいた。


「さ。みんな、食えって」


割り箸を渡されて、私たちは我一番にと料理に手を伸ばした。


「あ、このサーモン食べれる」


実はサーモン嫌いな私が、そう呟くと、ともみんがこっちを向いた。


「彩(あや)ちゃん。サーモン嫌いやった?」


ちなみに、彩ちゃんとは私のこと。
近藤彩芽(こんどうあやめ)で、彩ちゃん。


「うん。苦手」


「えー!人生半分損してる!!」


「でも、これは初めて食べれた」


ともみんに笑いかけると、私たちの会話をちょうど向かいの席で聞いていた、東先生がドヤ顔をしてきた。


< 7 / 156 >

この作品をシェア

pagetop