誰よりも大切なひとだから。
学級委員女子の声とともに、黒板は名前で埋まっていく。
「19番長野くん」
長野くんのほうが私よりも先に名前が上がった。
教卓が目の前の、前から2番目。
長野くんのほうをチラッと見たら、彼は相変わらず無関心そうに、黒板を見て、その視線はまた参考書に戻った。
真面目だなー長野くん。
かくいう私の机上にも英語の参考書が置いてあるけどね。
寝た振りをして、机に伏せながら、斜め後ろを見つめる。
こうすれば、視線がどこに向かっているのかなんて、見えない。
長野くん。
真面目でまっすぐで。
真剣な瞳とクールな横顔。
なのに、笑うと可愛くて。
それに何より、おっちょこちょいで。
そのギャップ。
ほんま、禁止にしてよ。
毎日毎日、"好きだ"って気付かされるから。
「26番中原」
その名前が上がった瞬間、後ろの席から猛烈なビンタを背中に受けた。
「私の名前出たでた!彩ちゃん!」
顔を上げると、なるほど、ともみんの名前がちょうど書かれているところだ。
目を見開いた。
ともみんは、長野くんの隣の席なのである。
つまり、ともみんと引っ付けて書いた私は……。
「27番近藤」
長野くんの斜め前の席なのである。
つまり、今の席関係と何も変わらない。
右斜め後ろに長野くんがいる。
それだけで嬉しい。
くじを選んでくれたともみんに感謝だ!!
まぁ、私が長野くんのことを好きだということは、内緒だから、声には出せないけど。