誰よりも大切なひとだから。



全員の名前が書かれたところで、座席を入れ替える。


机を動かさず、自分の荷物だけを持って、新しい席に着く。


「さすが、東先生。くじの方法変えないから、また前後の席やな!」


興奮した面持ちで話しかける、ともみん。


友だち同士で固まりあえる、席替えは本当にありがたい。


「あ、近藤さん。また斜め前」


荷物を手に、新しい席にやってきた長野くんが私に話しかけてくれた。


そして、目を細め、白い歯を見せて笑った。


その笑顔に胸が苦しくなる。


「ほんまなやな」


慌てて笑顔を返す私。


これで、これからも話しかけられる。


彼との楽しい時間は続くんだ。


いっぱい話しかけよう。
いっぱい笑いかけよう。


きみの記憶の中に、私という存在を印したい。


そして、私の記憶に、新しく見つけたきみを焼き付けたい。



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