誰よりも大切なひとだから。
彼の姿を見るだけで嬉しくなる。
私ってほんま、単純。
「おはようございます」
「あれ?お前、何でそんなビショビショやねん」
私の斜め後ろに座った彼は、驚くほどにびしょ濡れ。
制服の学ランから、髪から、鞄から、雫が滴っている。
「傘は!?」
私の叫びに長野くんは苦笑をした。
「それがさ、駅前の駐輪場に置き忘れて。気がついたのが、もう電車に乗ったあとでさ」
つまり、駅から学校まで、この土砂降りの中、歩いてきたわけだ。
もちろん傘なしで。
開いた口が塞がらない。
長野くん。
相変わらず、おっちょこちょいというか、天然というか。
やっちゃった、と笑う顔が、ちょっと、可愛いんですけど。