誰よりも大切なひとだから。



休み時間も、辛そうにしていたから、じっと見つめていると、視線に気づいた彼が私を見つめた。


「ずっと、咳してんな」


「ごめんな。うるさくて」


申し訳なさそうに、彼は眉を下げた。


「ううん。雨に濡れたからやんな?保健室行かんでいいの?」


「熱は無さそうやから、大丈夫。心配かけてごめん」


彼は私を安心させようと、微笑みかけ、咳が出たから失敗した。


だけど、彼のためにできることなど、私にあるわけなくて、私はただ、「無理しなや」と声をかけることしかできなかった。


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