誰よりも大切なひとだから。



そんな私の部活動について少し話していたら、真由美ちゃんは突然剣道場の入り口を指差した。


「もっと寒そうなのが来た」


見るとそこには長野くんである。


半袖半ズボン。
そして、裸足。


元気一杯の小学生じゃないんですから。


「長野くん。おはよ。寒ないの?その格好」


私が声をかけると、長野くんが困ったように笑った。


「うん、寒い!」


「じゃ、長袖着ろよ。見てるこっちが寒いわ」


間髪入れずに、真由美ちゃんのツッコミが入る。


私も真由美ちゃんに同感します。


「いや、この格好でもいけるかなー思ってんけど、無理やった」


……前にもなかった?このくだり。


東先生の家に遊びに行った時。
彼のおっちょこちょいさに気付いた時も、彼は薄着で、震えていた。


長野くんはゴホゴホ咳き込む。


「昨日あれだけ濡れて体冷やしてんから、気をつけなあかんやん」


昨日の今日でこれ。


……もう少し、自分の体を労りましょうよ。


「体、気いつけや」


そう彼に笑いかけると、彼は不意をつかれたように、一瞬固まって、それから、ありがとうと笑ってくれた。


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