誰よりも大切なひとだから。



*.**.**.*


沢山の視線が私に注ぎこまれた。


そこには私の知っている顔もあれば、全く知らない顔もある。


私がその人を知っていようと、知らなかろうと、向こうは私をしっているらしい。


……幾度となく、成績の学年トップ争いを繰り広げてきたおかげで、私はわりと名前が知られているのだそうだ。


だから、私が英語を得意でないということにも関わらず、東先生が私を土曜講習の講師役に抜擢したのは、そういうことなんだと。


「今週からこいつがわんちゃんと交代で講習を進めてくれるからなぁ」


この2時間、東先生の仕事はお茶を飲むことらしい。


まぁ、講習用のプリントは、先生が頑張って作ってくれたものだけど。


「よろしくお願いします」


「彩芽ちゃん!ガンバ!!」


友だちの声を聞いて、少しだけ緊張がとけた。


顔はポーカーフェイスを保っているものの、人前に立って話をするのは、あまりないので、緊張する。


みんなの視線が私に合わせられている。


もっとみんな、ごちゃごちゃしちゃっていいんだよ。


そんなに見つめてくれなくてもいいんだよ!!


……長野くんも後ろのほうから、こっち見てる。


あ、私服だ。
今日はさすがにパーカーの上に1枚羽織るものがあるらしい。


だけど、やっぱり風邪をこじらせたみたいで、鼻をすするような仕草をしている。


「頼んだで!近藤」


先生の声で慌てて我に返った。
事前に渡されていたプリントをめくる。


「じゃ、早速始めていきまーす!みんなプリントある?一ページ目見て」


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