誰よりも大切なひとだから。
「部活お疲れさん」
教室に入ってきたのは、東先生。
ダッフルコートに身を包み、かじかんだ指先を擦り合わせている。
部活の引退を知らせたのは、顧問の先生とこの東先生だけだ。
昨日の本番が最後だという事も教えていた。
「勉強頑張れよ。みんな、お前の頑張りに期待してんねん」
「やるよ。今日から放課後残ってやるねん」
勉強熱心な友人を集めて、勉強会だ。
一人でやるより、モチベーションが上がる。
辛いときはみんなで励ましあえるから。
「おはよーございます」
控えめに教室に入ってくる長野くん。
マフラーに首を埋めているのが、何か可愛い。
「長野くん。おはよ。模試やってきた?」
模試とは、土曜日に校内で開かれた模擬試験のこと。
理系は時間が足りず、理科一教科を自宅受験しなければいけない。
土曜日は模試を終えて帰宅したのが6時過ぎ。
それから夕飯と入浴をして、模擬試験を解いて。
翌日曜日は、朝の6時には出発。
6時半には集合。
昨日の帰宅は9時を過ぎていた。
それから引退した私にラインでメッセージが届いていて、全員に返信を返して。
引退祝いにと、仲間がくれたプレゼントを見て。
メッセージカードの文章を読んで。
ありがとうラインを送って。
ハードだった。