キミ色の夏
「ん? あ、おい柳井っ、大丈夫かっ!?」
「……気付くの、遅すぎだよ……」
「いや、だってペットボトルが……って、お前まで濡れてんじゃんっ!!」
……ほんと、気付くの遅すぎだよ。
さっきは
『俺の柳井に何やってんだ この野郎ッ!!』
って、凄い剣幕だったのに。
「とりあえずティッシュで……って俺持ってねぇしっ!!
あぁそうだトイレットペーパー!! トイレなんだから当然っ……って置いてないじゃんっ!!」
焦った顔でポケットを探ったり、トイレの中を慌ただしく動いたり。
柚希くんの動作1つ1つが、なんだかとても面白い。
「あぁもう笑うなよっ」
私が笑ってることに気付くと、恥ずかしそうに顔を赤らめた。
私よりも年上なのに、本当に子供みたい。
でも……柚希くんのそういう部分、大好きだ。
「おい瑞希っ、ティッシュ持ってないっ!?」
「ハンカチならあるけど?」
「だぁっ、この野郎さっさと渡せよっ!!」
ポケットから出したハンカチを、
顔の前でひらひらとさせていた瑞希くん。
それをあっという間に奪い去った柚希くんは、
水道でハンカチを濡らしたあとにそっと私の顔を撫でた。