キミ色の夏
「よし、俺たちも行くか」
「うん」
「ほい、じゃあ俺の背中に乗って」
「……え?」
背中?
柚希くんの背中に私が乗るのっ……!?
「その足じゃ歩くのしんどいだろ。 アホみたいに暑いし、さっさと帰ろうぜ」
「で、でもっ……私 重いよっ!?」
「姪っ子とそんなに変わらないだろ」
「いやいやいやっ、相当違いますからっ!!」
柚希くんの姪っ子ちゃんはまだ3歳でしょっ!?
私は17歳ですよっ!?
姪っ子ちゃんは私でもおんぶ出来るけど、
私が私をおんぶするって考えたら絶対無理だからねっ!?
「私ほんとに重いからっ。 それにほらっ、柚希くんの服もベタベタになっちゃうよっ!!」
「今更ベタつきなんて気にしませんが? むしろスポーツドリンクまみれ大歓迎ですが?
まっ、帰ったら俺もシャワー浴びるから大丈夫だよ。 つーか、お前一人くらい普通に背負えるだろ」
「いやいやいやっ、柚希くんが潰れちゃうよっ!!」
「プッ……潰れるわけねぇだろ。 つーか細っこいお前を背負って潰れたら、俺どんだけ弱いんだって話だから。 ほら、来いって」
「……っ……」
柚希くんが私の目の前で膝をつき、
背中へ乗るようにと目で促す。
「暑いんだから早くして。 俺がぶっ倒れたら全部 柳井のせいだからな?」
「ちょっ……なんでっ……」
「早くしろってば」
「う、うん……じゃあ、乗るね……?」
そっと柚希くんの背中に、自分の体を預ける。
本当に、大丈夫かな……?
「せーの、っと」
「わっ……」
かけ声と共にふわりと体が浮く。
立ち上がった柚希くんの背中から見る景色は、
当然だけど いつもよりもほんの少しだけ高かった。
「ほら、大丈夫だろ?」
「む、無理しないでねっ……?」
「大丈夫だよ」
ゆっくり、ゆっくり、柚希くんが歩き出す。
凄いな……。
私、本当におんぶされちゃってる……。