キミ色の夏
「……誰かに見られたら、恥ずかしいね……」
「そう? じゃあ抱っこの方がいい?」
「もー、そっちの方が絶対に恥ずかしいからっ」
「こら暴れんなっ」
「わっ……ごめんっ」
バタバタと動いてしまったせいで、
柚希くんが微かにバランスを崩す。
危ない……柚希くんが転んだら、私は間違いなく死亡する……。
「や、やっぱり降りようか……?」
「いや、おとなしくしてれば問題ない。 さっきみたいに動くのは無し」
「……あ、りょーかいです」
もうバタバタしないで、静かにしてよう。
そう思いながら、静かに静かに柚希くんの首筋を見つめる。
……柚希くん、いっぱい汗かいてる。
首だけじゃなくて、チラリと見えた額も汗でいっぱいだ。
背中もそう。
私の服はスポーツドリンクで濡れちゃってるけど、
柚希くんの服は汗で濡れてしまっている。
……そういえば、トイレに飛び込んで剛くんを殴った時、
柚希くんはハァハァと苦しそうに息をしてたっけ。
瑞希くんとスポーツドリンクの話をしながら息を整えていたけれど、
それでも汗は全然ひかなくて。
……柚希くんはいっぱいいっぱい走って、
ずっとずっと私のことを必死に探してくれたんだよね……。