キミ色の夏
「……柳井には幸せになってもらいたい。 だから連絡はしない。 そう思ってたのに、体は勝手に動いてた。
なんつーか、無我夢中ってやつ? 自転車でコンビニに行ったのに、気付いたら走って探してたんだ。
あとで自転車取りコンビニ行かないと。 自転車があれば、お前を運ぶのに汗なんてかかないのにな」
表情はわからないけれど、柚希くんは多分、苦笑している。
自分のこと、きっとカッコ悪いって思ってるんだ。
……全然そんなことないのにね。
汗だくになりながらも私のことを探してくれた。 それって、凄く嬉しいことだよ……。
「……ありがとう、柚希くん」
「だから、もうお礼はいいって。 ほんと恥ずかしい」
「うん……ごめんね」
「謝るのも無しっ」
「うん」
そっと、また柚希くんの体を抱きしめる。
「汗でベタベタになるぞ」
って、また言われたけれど。
それでも私は柚希くんの体を抱きしめていた。
ずっとずっと、家に着くまでずっと、ずっと……。