キミ色の夏


「あの時だけじゃなくて、今だって可愛いって思ってる。 ……ていうか、ずっとずっと前から可愛いって思ってたからなっ」



柚希くんの顔が、ほんの少しだけ赤くなる。

それでも視線は真っ直ぐに私の方へと向けられていた。



「……本当は俺、去年から柳井のことを知ってたんだ」

「え……?」

「部活で、杉田と一緒に居る柳井を見てさ……中学の時のことを話そうかどうか、ずっと迷ってた。
でも言えなかったんだ。 だって二人は凄く楽しそうだったから……杉田は、俺の知ってる杉田と違っていたから……」



剛くんと二人で笑い合ってた時を、柚希くんは知っていたんだ。

私たちが付き合う前から、柚希くんは私たちのことを見てたんだ……。



「……馬鹿だなって思うかもしれないけど、杉田と一緒に居る柳井を見てるうちに好きになったんだ。
いい顔で笑うな、可愛いなって思って……柳井の隣に居る杉田のことを凄く羨ましく思ってたよ。
前にアイツにやられたように、奪ってしまいたい。と、思うくらいに……」



……そう、だったんだ……。


なのに私、全然何も……柚希くんの存在すらも、知らずに……。


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