キミ色の夏
「……でもさ、奪うのは絶対にダメじゃん。
杉田みたいな最低な奴には、なっちゃダメだろ……?」
「……うん」
「だから俺は何も言わなかったよ。
杉田は心を入れ替えたんだって信じてたし、柳井の笑顔がずっと続くようにって願ってた。
でも……あの日お前は泣いていた。 薄暗い道を一人で歩きながら、今にも倒れてしまいそうな感じで……」
田んぼのそばの道を歩きながら、私は泣きながら歩いていた。
あれは剛くんに別れを告げられた日……そして、柚希くんと出会った日……。
「後ろ姿を見て、まさかな……って思った。 近づくにつれて柳井だって確信して、泣いてるのを見て本当に本当に驚いた。
杉田に何かされたんじゃないかって、凄く心配した」
「そう、だったんだ……」
「あの日な、俺 杉田の家に行ったんだよ。 お前と別れたあと、そのまま直行したんだ」
「え……剛くんの家に……?」
「そう、パソコン部部長としてな。 『お前の彼女が泣いてたけど何かあったのか』って。
杉田は俺を見てちょっとビビってたけど、『別れたから』ってことだけを教えてくれた」