キミ色の夏


……剛くんは中学時代に柚希くんの彼女を奪ってる。

その柚希くんが家に来たんだから、驚くに決まってるよね。


あの時のことを仕返しされるんじゃないか……って思ったはず。


でもそこに居たのは『パソコン部部長』としての柚希くん。

部員である私が泣いてるのを目撃したから、



『何かあったのか?』



と剛くんに聞きに行った。

それ以上でも以下でもない。

パソコン部部長として聞きに行っただけ。


だから剛くんは



『別れた』



って素直に言ったんだ。

別れたから私が泣いていた。 と、柚希くんに教えるために。



「……別れたって聞いた時、凄く安心したよ。
杉田と離れれば これ以上ツラい目には遭わない。 これ以上泣く必要は無い。ってことだから」



そっと、視線が私から外される。

柚希くんは私が掴んでいるタオルを見つめながら、小さく小さく言葉を続けていった。


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