キミ色の夏
「……ねぇ柳井」
「ん? どしたの?」
クルクルと回していたシャーペンを置いた瑞希くんが、
私の隣に静かに腰を下ろした。
「兄貴としないのなら、俺とキスする?」
「……えっ!?」
「ほら、今って二人きりだし」
「はいっ……!?」
み、瑞希くんとキス!?
なんで突然そういう方向になってるんですかっ……!?
「父さんと母さんは仕事で、兄貴も家庭教師のアルバイト中。
今 家の中に居るのは俺と柳井の二人だけ……ナイスタイミングだと思うけど?」
「み、みみみ瑞希くんっ……!?」
「ほら、こうやって隣に座ってさ、顔寄せればいいだけだよ?」
「ち、近いよっ!!」
「キスするんだから、近いのは当たり前」
すぐ目の前に、瑞希くんの顔。
私の目に見えているのは瑞希くんの顔だけだ。
お互いの息がぶつかって、その温かさも伝わってくる。
瑞希くんとの距離、数センチっ……!!
「って感じでキスしなよ。 いい? わかった?」
「……へっ?」
「こういう感じで兄貴とキスしろって言ってんの」
「あっ……柚希くんとね……うん、そうだよね……」
瑞希くんの顔が、サッと離される。
……あぁもうっ、ビックリしたっ!!
本気でキスされるかと思っちゃったじゃんっ……!!