キミ色の夏
「なんで泣いてんの?」
「なっ……ちょっ……」
「なんかイヤなことでもあった?」
突然のことで、頭の中はパニック。
バタバタと暴れるけれど、男の人は手を離してくれない。
「は、離してくださっ……」
「これあげる」
「……えっ……?」
そっと手が離された時、
男の人はすぐに自転車のカゴへと手を伸ばした。
そこにあったのは、チョー有名なメーカーのペットボトル。
夏の水分補給ならコレと言われてるもので、
風邪の時には点滴の代わりになる……と聞いたことがあるブルーのラベルのあの飲み物。
「何があったかは知らねーけど、元気出せよ」
「あっ……」
「じゃな」
まだ少しだけ冷たさの残ったペットボトルを私に押し付けたあと、
男の人は再び自転車を漕ぎ出して去っていった。
「い、今の人……なんなの……?」