キミ色の夏
……あの人、誰?
同じ学校の制服を着てた……よね。
でも全然知らない人だった。
「……ていうかコレ、飲みかけだし……」
押し付けられたペットボトルは、既に半分ほど中身が無くなっていた。
……どこの誰かもわからない人から急に飲みかけを渡されても困る。
ううん、飲みかけじゃなかったとしても、ちょっと困る。
「……あの人、なんなんだろう……」
まったくもって意味がわからない。
私はあの人のことを知らないのに、あの人は私を知ってた?
それとも、私のことを知らないのに飲み物を渡してきた……?
……ほんと、意味わかんないよ。
「でも……優しそうな人だったな……」
真っ直ぐに私を見る瞳は、真剣そのもので。
ペットボトルを私に差し出した時の笑顔は、
とっても優しそうだった。
「……意味、わかんないよ」
だけどあの人のおかげで私の涙は止まっていた。
そして、なんだか少しだけあったかい気持ちになっていた。
「……変なの」
あの人に渡された、
ブルーのラベルのペットボトル。
それを両手で持った私は、その時 確かに笑っていた。
名前も何も知らない彼の優しさによって、
私の顔からは涙がすっかり消えていた。