キミ色の夏
「うぅ……ぐすっ……ぐすんっ……」
剛くんからの無視。
そして、私のことを汚いゴミのように見ていた、あの視線……。
全部がツラくて、苦しくて、しんどくて、
だから私は
『もう死のう』
って思った。
屋上から飛び降りて死のう。
そうすればもう苦しくないし、ツラくない。
そう思ったから屋上に向かったけど……、
「……なんで、カギが開かないのよぉ……」
……立ち上がってからガチャガチャとドアノブを回すけど、屋上に通じる重たいドアはウンともスンとも言わない。
「うぅ……開いてよぉ……」
漫画の世界なら屋上への出入りは自由だし、
たとえカギがかかっていても、なんとかすれば開く。
それが当たり前なのに、
現実世界じゃやっぱり無理……。
「……どうして私ばっかり、こんな……」
「あ、また泣いてる」
「……え?」
ふっと階段の下の方から声がした。
ゆっくりと階段を上ってくる足音と、
「なんで泣いてんの?」
と言う、聞いたことのある声。
涙がボロボロと溢れる中で見えたのは、
2日前に田んぼのど真ん中の道で出会った男の人だった。
「どうしたのさ、こんなところで」
「あ、の……」
「ほら、これ飲みな?」
そう言って差し出されたのは、またあのブルーのラベルのペットボトル。
……今日も飲みかけだ。
「……いりません……」
首を横に振ったあと、
私はドアに寄りかかってからズルズルと座り込んだ。
そんな私の目の前にペットボトルを置いたあと、
男の人は私の隣に静かに腰を下ろした。