キミ色の夏


「あ、もしかしてあの時の男子が彼氏?」

「は、はい……あの時はまだ、付き合ってませんでしたけど……」

「名前は確か、スギ……スギ ゴウタロウだっけ」


「杉田 剛……です」



……本当に他学年の生徒の名前はうろ覚えらしい。

むしろ私の名前を正確に覚えてたことが奇跡だったのかも?



「で、なんで別れたの?」

「……『トッコにはもっと相応しい人が居るよ』って、突然言われて……」

「トッコ?」


「あ、私の名前が徳子だから、トッコって呼ばれるようになったんです。
剛くんはその方が可愛いし好きだから、って……言ってて……」



私のことを初めてあだ名で呼んだ時の剛くんの笑顔を思い出して、また涙が出てくる。



……ていうか私、なんでこんなこと話してるんだろ。

この人に剛くんとのことを、言う必要なんてないのに……。



「徳子だからトッコ、か。 付き合う前からそう呼ばれてたの?」

「……あの、これって教える必要あります?」

「いや、全然無いね」


「……」



……なんか、調子狂うな……。

でもまぁ、教える必要が無いのなら教えなくてもいいよね。


この人は確かに先輩だし、同じ部活の部長さんではあるけれど、

『全然無い』って本人が言ってるし、私もそう思う。


だから、これ以上は何も言わないことにしよう。


< 22 / 144 >

この作品をシェア

pagetop