キミ色の夏


……柚希くんって、優しいな……。

その笑顔はもちろん、言葉も、声の感じも凄く優しい。


柚希くんと一緒だったら楽しいかもしれないな……と、そんな風に思う。

柚希くんと一緒に居たら、剛くんのこと忘れられるかな……。






「……全部柚希くんが奢ってくれるなら、一緒に行ってもいい……よ」



ボソボソとそう言った私に、柚希くんは満面の笑みで



『任せといて』



と返してきた。




屋上前の蒸し暑い空間で、

私と柚希くんは見つめ合っていて。


彼が笑うのにつられて、私も笑顔を見せる。


さっきまでの涙はすっかり消えて、

笑顔で居るのが当たり前のようになっていた。




田んぼに囲まれた細い中の道で出会った私と柚希くん。


屋上前の踊り場で再会した私たちは、

もうすぐ始まる夏休みのことを話しながら、いつまでもいつまでも笑っていた。


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