キミ色の夏
突然過ぎて、意味がわからない。
いい人?
剛くんよりもいい人?
……そんなの居るわけないよ。
だって私は剛くんのことが好きで、
剛くんのことだけを見て過ごしてきたんだもん。
なのに、どうしてこうなっちゃったの……?
「……どうして別れなくちゃいけないの?」
知らず知らずのうちに、
剛くんに嫌われるようなことをしちゃってた?
だから剛くんは別れ話を切り出してきたの?
「私、剛くんに何かしちゃったかな……?」
「そんなんじゃないよ。 でも俺は、トッコには相応しくないと思うんだ」
トッコ。というのは私のあだ名。
徳子という古臭い名前の私に、剛くんがつけてくれたあだ名だ。
その方が可愛いよ。って言ってくれたあだ名……。
「ふ、相応しくないって何……? 私、剛くんのことが好きなんだよ?」
「俺もトッコのことが好きだけど、でもゴメン。 別れよう」
「そんなっ……」
「じゃあね、トッコ」
私と目を合わせることなく、
剛くんは足早に体育館裏から去っていった。