キミ色の夏
「柳井」
「……え? あ、ごめんっ……」
瑞希くんが近くに居るのに、ボーッとしてしまった。
せっかくみんなで楽しく笑っていたのに、
なんで私、剛くんのことばっかり考えてるんだろう……。
「あのさ、杉田のことだけど」
「……ごめん、もう大丈夫だよっ。 私みんなのところに戻るねっ」
これ以上考えたって仕方がない。
だって私はもう剛くんの彼女じゃないし、神村さんみたいになることだって出来ない。
私の名前は柳井 徳子。
顔も名前も性格さえも、ごくごく普通の……というか、平凡な人間だ。
どう頑張ったって、神村さんみたいにはなれない。
それがわかってるから、考えるだけ無駄なんだ。
……そう、全部無駄。
剛くんはもう私のそばには居ない。
私はもう、一人きりなんだ……。
「柳井っ」
瑞希くんが名前を呼ぶけれど、
私はそれに気付かないフリをしながら みんなのところへと戻った。
瑞希くんは剛くんのことで何かを言おうとしてたけど、
もう剛くんの話はしないよ。
何も話さないし、何も聞きたくない。
だってこれ以上 剛くんのことを話していたら、
私は泣いてしまいそうだったから……。