キミ色の夏


ワァッ と歓声が上がり、拍手も上がった。


お酒を飲んでるおじさんたちが上機嫌に『たまやー』と言うと、ドッと笑いも起きる。


大きな花火に続き、

暗い空には次々と花が開いていった。


間近で見る、初めての花火。


それに目を奪われていた時に、

柚希くんが上半身を起こすのが視界の隅に映った。






「あっ……あのっ、さっきなんて言おうとしたのっ……!?」



大きな声でそう聞いたけど、花火の音で声がかき消されてしまう。

だから私を見ていた柚希くんは、不思議そうに首を傾げるだけだった。


どうすれば声が届くだろう?

と考えた末、出た答えは とても簡単なものだった。



「柚希くんっ」



私は柚希くんの体に自分の体を寄せて、耳元で言葉を発した。

花火に負けないようにと、精一杯に。



「さっき何か言おうとしてたよねっ? なんて言おうとしたのっ?」



今度こそハッキリ聞こえただろう私の言葉に、

柚希くんは微笑んでから首を横に振った。



「なんでもないよ」



と。



「花火楽しんで」



と、彼は私の耳元で優しくそう言った。



顔が離れたあとに見えた柚希くんは、

今までの中で1番 優しく笑いながら空を見ていた。



私の手を握りしめながら。


強く強く、握りしめながら。






闇に放たれて開く たくさんの花。

キラキラと輝いて 消えていく花。


とても美しくて とても儚い花。


それを見つめながら、

私と柚希くんはいつまでもいつまでも手を繋いでいた。


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