キミ色の夏


私が一人で居るように、剛くんも一人。

どこかへ行くつもり……というか、ファミレスに入るつもりだったみたい。


剛くんの右手には携帯が握られている。


多分、携帯を見ながら歩いてて、

ファミレスに入ろうと ふと前を見たら私が居た……という状況。


こんなに近づくまで気付かないなんて、

普通に前を見て歩いていたら あり得ないもんね……。



「……久しぶり」



やっと彼が話したから、私も



「……うん」



と言葉を返した。


当たり前だけど、ギクシャクしてる……。


ううん、剛くんは普通な感じだけど、

私が上手く話せないんだ……。


凄く緊張してるし、昇降口での冷たい瞳を思い出して胸が苦しくなってる。


そんな私を真っ直ぐ見つめる剛くんは、静かに静かに髪の毛をかき上げた。



……別れてから随分経つのに、

今でもカッコイイなと思ってしまう。


馬鹿だな、私。

剛くんはもう私のことなんてなんとも思ってない。って知ってるのに。

なのに剛くんのカッコよさにドキドキしている。


こうやって二人で居ると、

また手を繋げるんじゃないかって思ってしまう。


そんなこと、絶対にあり得ないのに……。


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