キミ色の夏


その『大事な話』というのは、柚希くんのことで……。

それがどういう話なのかは わからないけれど、きっと聞いた方がいい話なんだ。


剛くんの、あの真剣な声……あれは絶対にホンモノだと思う。

ホンモノだと信じたい。






「……行こう」



ファミレスの近くの公園。

ここからそう遠くない場所だし、体調も戻ったから大丈夫。


……柚希くんと瑞希くんに何か言っておいた方がいいかな……?

でも、剛くんと会うことを話したらきっと止められる。


『上手く行くといいね』って言ってた柚希くんは、

私を快く送り出してくれるかもしれない。


けど……剛くんは『公原先輩のことについて』と言っていた。

柚希くんのことで、大事な話……。


どんな話かわからない状態だから、

柚希くんにも黙っていた方がいいと思う。



「……だけど、このまま帰るのはよくないよね……」



キョロキョロと辺りを見回したあと、

固定電話の横にあったメモ帳を1枚取る。


そこに



【用事が出来たので帰ります】



と書いて、見えやすいテーブルの上に置いた。




「……ごめんね、柚希くん。 瑞希くんも、ごめんなさい」



何も言わずに帰ってごめんなさい。

何も言わずに、剛くんに会いに行ってごめんなさい。


でも……、



「……きっと、大丈夫……」



……大丈夫。

剛くんと少し話して、そのあとはすぐに帰る。


それだけだから大丈夫。

……絶対、大丈夫。



「……本当にごめんなさい」



誰も居ない玄関で小さく小さく言ったあと、

私はそっと家をあとにした。


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