キミ色の夏


──『俺ならお前を泣かせたりしないよ?』


「……っ……」



唇が触れそうになったその瞬間、頭の中に柚希くんの言葉が浮かんだ。


そしてそれとほとんど同時に、

私は剛くんの体を後ろに突き飛ばしていた。



「……トッコ?」

「……」



柚希くんのあの言葉は、屋上前の踊り場で再会した時の……

私が、剛くんにフラれたって話をした時の言葉……。


私と別れて2日しか経ってないのに、

剛くんの隣には既に別の彼女が居た。


あの時の冷たい視線がツラくて、苦しくて、悲しくて。

涙をいっぱい流していた時に柚希くんがそう言ったんだ。



『俺なら泣かせたりしないよ』



って。


そして……、



──『俺が、お前の隣に居てあげる』



……って、そう言って柚希くんは微笑んだんだ。


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