キミ色の夏
「ぐっ……」
腹部を打たれた剛くんは、
私の横の壁に体を打ち付けたあとにズルズルと力なく座り込んだ。
……というか、もう意識はない。
柚希くんが放った一発でノックダウン……だったみたい。
「遅いよ兄貴」
「これでもダッシュしてきたっつーの!! ていうかお前っ、俺の命の恩人使って何やってんだよっ!!」
「命の恩人って言うけど、それ『人』じゃなくて『物』だよね」
「うるさい、恩ペットボトル様だっ」
「意味わかんないよ」
いつもと同じように笑う瑞希くんのそばで、
柚希くんは床に転がるペットボトルを涙目になりながら見ていた。
「あぁ俺のスポーツドリンク……」
「兄貴が買ったやつじゃないだろ」
「俺の神様……」
「だから意味わかんないってば」
……普段とまったく変わらない公原兄弟。
そんな二人を見て、ようやく私の体から力が抜けた。
……終わったんだ。
助かったんだ……。