ペットな彼女
ペットの失恋
指先が震えている。
智明さんの言葉にかなりのダメージを受けたからだろうか。
それでも、どんなに辛い言葉を言われても、いつもの優しい智明さんがどうしても好きで好きで仕方ないのだ。
たった1度冷たい言葉を言われたくらいで長年の想いを止めることなんて出来ない。
まだ智明さんの膝の上に座らされている状態だ。
この体勢でさっきの会話をしていた事を冷静に考えると何とも滑稽だ。
普通の恋人同士ならもっと甘くて幸せな時間を過ごすための体勢ではないかと思う。
虚しい感情が胸いっぱいに広がるのを抑えたくて私は智明さんの膝から降りようと足に力を入れた。
だが智明さんはそれを阻止するようにしっかりと私の腰を抱えて離そうとしてくれない。
「智明さん?あの……、腕離して……?」
「…………いやだ。」
「……?
でも、私は智明さんの彼女じゃないし、こういうのも迷惑なんじゃ…」
「……………これは別。」
そのままぎゅっと抱きしめられてさっきまでの智明さんの言葉は全部幻想なんじゃないかとさえ思ってしまう。
なんてちょろい女なんだ、私は……。
自分で自分に呆れるよ。
少しの間抱きしめられて幸せな時間を過ごす。
体が離されると、智明さんがじっと私を見つめてきた。
何かを確認するように、私に許しを請うような眼差し。
私は瞼を伏せて彼の首に腕を回してゆっくりと引き寄せる。
智明さんは相手は私じゃなくてもいいと思っている。
でも私は、智明さんが他の女の人を抱くなんてどうしても嫌なのだ。
東京にいる間だけは私以外の女の人に触らないで欲しい。
今だけは、私の智明さんでいて………
*****
ベッドに体を押し倒されて彼が私の体を囲うようにのしかかる。
唇を柔らかく、はむはむと食べられるようなキス。ずっとずっとこうしてふわふわな世界に2人でいたい。
唇が離れて私が飲み込みきれなかった唾液が顎を伝う。
―キス、やめないで…
―遠くに行かないで…
―私を置いていかないで…
「……くそっ、なんなんだよ。
なんでお前は………っ」
どうやらベッドでも私は彼を煩わせてしまったようだ。
でも今度はなんで彼の機嫌を損ねたのか全く心当たりがない。
ちゃんと彼が教えてくれたキスも上手くできるようになったはずだ。
「……ごめんなさ……い。これ以上私のこと嫌いにならないで……」
もう一度彼は舌打ちをすると、再びさっきのキスを続けてくれた。
もっともっと欲しい
私の中心を撫でていた彼の指がナカに入ってきて体がビクンと跳ねる。
「んっ、んっ、んっ」
キスを続けられているせいで上手く呼吸が出来ない。
もうキスは苦しいからと、彼の胸を軽く押して意思表示すればいつもは止まるはずなのに、何故か彼は離れるどころか更にのしかかってくる。
「んん~~っ、んっ」
一気に上り詰めて強すぎる快感に涙が溢れた。
彼の指が抜かれてほっと一息つこうとすると次に指とは比べられないほどの質量が私のナカに押入れられる。
キスを続けたまま体ごと揺さぶられ始めた。
酸欠で頭がくらくらしてもう何もかも考えられない。
どうなっても構わない。
どう頑張っても智明さんの気持ちは揺らがないだろう。
それなら残りの時間を少しでも一緒にいられるように。
最後の日まで、私は智明さんのペットとして傍にいよう…
きっと私は智明さん以外の人に興味も持てないだろうから。
12年の片思いが実っただけでも私は十分。
智明さんにされるがまま、その夜も更けていった…