イクメン作家と恋心。初期版。(修正済み&205ページ挿し絵有り)
その様子を眺めていたら
先生は、本から何かを取り出していた。
あれは、写真かしら?
1枚の写真らしき物。
すると聞き取りにくい声で何かを呟いた。
聞き取れなかった。が、しかし
それを言った後の先生の表情は、切なそうだった。
今にも泣き出しそうな…そんな表情だ。
女の勘というヤツか
私は、その写真に奥さんが
写っているのではないかと思った。
だって、先生が悲しい表情したのを
見たのは、奥さんの昔話を聞いた時だったから
普段は、クールで怖い時もある先生だが
睦月君が寝静まった夜に
こうやって奥さんを思い出しているのだろうか?
「………。」
私は、そのまま布団の中に潜り込んだ。
あんな表情を見た後では声なんてかけられない。
先生は、今でも変わらず奥さんの事を…。
ギュッと目をつぶる。
そんなの分かっていた事ではない。
最初から…。
涙が溢れてきた。
どうして先生は、独身ではなかったのだろう。
そんな罰当たりな事を思う自分は、最低だ。
頬を伝う涙がシーツを濡らした。
布団に潜ってから何時間経ったのだろうか
気づくと何だか身体が重い。
泣いたから?いや、それより
ズシッと漬け物石を乗っているような感覚だ。
「くっ……」
力を入れて起き上がる。
すると睦月君が布団と一緒にへばりついていた。
睦月君……。
「お、おはよう。睦月君」
「………おはよう」
挨拶をしてくれたが、離れてくれなかった。